2016年11月1日火曜日

時空の奥行き

 時間空間の奥行きというのは、たとえば、雷さまでも感じられる。
 それは、空間の奥行きが時間の奥行きとして、ぼくたちに示される。
 稲妻が遠ければ遠いほど、雷鳴が聞こえるまでの時間も遠くなる。

 その遠近感が衝撃的なのは〝衝撃波〟という現象の到達時間であろう。
 それは〝音の波〟よりも速い。つまり〈音〉よりも早くやってくる。だから前兆となる音は聞こえない。
 技術の進歩により〝衝撃波〟は、マッハで飛行する戦闘機などによって現象する。
 マッハというのは、科学者の名であり、そういえば、パスカルもそうなのだ。
 パスカルは、「考える葦」の哲学者として有名だが、その時代の哲学者は、同時に理系の科学者でもあった。――自然哲学という。
 パスカルの同時代の、「思う、故に、我あり」のデカルトは、「解析幾何学」の創始者とされる。「デカルト座標」という術語は、数学の辞典に項目がある。
 気圧を示す〈ヘクトパスカル〉の〝ヘクト〟は〝百〟という意味のギリシャ語で、〈百パスカル〉という単位は、そもそもパスカルが真空の実験に成功したところから、もたらされている。以前は、日本では〈ミリバール〉といった。
 マッハは、アインシュタインによる相対性理論の創出を導出したとされるが、彼もまたその時代の哲学者でもあった。
 そのマッハの名に由来する〈マッハ〉は音速を示す。毎秒 330 メートル以上が通常の値となる。
 〈マッハ 1 〉を超えて飛来した戦闘機の轟音は、だから飛び去って行く音しか聞こえないようにも感じられる。
 さらには、「遷音速」で、〝衝撃波〟というものまで、おまけについてくる。これは超音速の〝爆発波〟である。
 曖昧な感じでもって少し詳しく説明すると、〈音〉は、おもに空気の振動でありすなわち〝音波〟であるが、〝衝撃波〟は、
「超音速で伝達される大気などの強力な圧力変化」であって、イメージ的には、もっと不正確に言い換えるとすると、
「超音速で通過する空気玉」と……すなわち〝超音速空気玉〟とも、表現できようか。
 戦闘機の轟音はどのように耳に届くか。〝衝撃波〟はどのように到達するか。
――イメージのままに語れば。
 たとえば音速から加速する戦闘機の〝衝撃波〟は、現物の戦闘機よりも遅れてやってくるのだ。
 つまり、六百メートル先で発生した〝衝撃波〟は〈マッハ 1 〉超えの超音速でその場に届くが、その後真上三百メートルに飛来した戦闘機の〝衝撃波〟は、それよりも早くやってくるかも知れない。
 〈マッハ 1 〉の〝音〟が三百メートル進む間に、戦闘機は何倍かを進むのだから、そこから想像するしかないのだが。
――以上の考察の正誤と正確な計算は、専門家に問い合わせてみてください。
 ちなみに。映画『トップガン』で、管制塔の前をおそらく〈マッハ 1 〉超えで通過した、F14 トムキャットの〝爆音〟は、すべてが同時に管制塔を揺さぶる。
 おかげで、お約束として、管制官は二度もコーヒータイムをしくじらなければならない。

 遅れてやってくる、「打ち上げ花火の音」しかり。
 かくして〈音〉だけでも充分に、空間の奥行きは時間の奥行きでもあることが知られるのであった、と。

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