2016年11月3日木曜日

1905年 「イー・イコール・エムシースクエア」

 1666 年は科学史上では、ニュートン奇跡の年といわれるようです。そして――。
 1905 年もまた、アインシュタインの五つの論文が発表された、奇跡の年なのです。
 そのなかにある、「光量子」に関する論文が、その後「物質波」につながります。
 その間、イギリスのエディントンらによって行われた 1919 年の日食観測の結果を受けて、アインシュタインの名は一躍有名になったのですが、それは 1915 年から発表された「一般相対性理論」による予測を肯定するものなのでした。
 それでも、ノーベル賞の栄誉が「相対性理論」に与えられることはありませんでした。
 日食観測で確認されたのは〈重力理論〉で、〝光の進路が空間の歪みによって曲がる〟というものです。――それと同等かどうかは分りませんが、実話。
 ニュートンも〝物体の影響で光が曲がる〟ことを想定していました。

疑問 1
 物体はある距離をおいて光に作用し、その作用によって光の射線を曲げるのではないか。そしてこの作用は(他の事情が同じならば)最小の距離において最も強いのではないか。
Isaac Newton OPTICKS, 3rd ed. 1721 岩波文庫『光学』 (p.302)

 1905 年は、アインシュタインの「特殊相対性理論」が発表された年なわけですが、そこでは、光速の不変が前提とされます。
 その「光速 (c) 」を元に算出される「エネルギー量 (E) 」は、「光速の 2 乗」に「質量 (m) 」をかけたものです。
 この計算式は、1905 年の第四論文である 「物体の慣性は、その物体に含まれるエネルギーに依存するか」 という論文中の
物体の質量は、その物体に含まれるエネルギー量である。
〔ちくま学芸文庫『アインシュタイン論文選』青木薫訳 (p.301)
という一文に示唆されているものですが、完成形の方程式の記述はその論文にはありません。
 それをカタカナでかいたら、「イー・イコール・エム・シー・スクエア」となります。
 四角、正方形を表わす英語「スクエア」は「平方」の意味もあり、この場合には「 2 乗」となります。

 このエネルギー算出の方程式は、『般若心経』 で有名な仏教の「色即是空」とよく対比されます。
 そのこと自体は、誰でも思いつきそうな対比なのですが、かつて仏教を大学で専門的に学んだ過去を持つ身として、漢文の言葉の意味について、無理に現代的な日本語にしてみました。
「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色」の部分です。
――聞いてください 『般若波羅蜜多心経』 可能性の世界。

色不異空
空不異色

色即是空
空即是色

 色々な形を表現しているものは、本来的には形をもたないものと、異なることはない。
 本来的に形をもたないものは、さまざまに形を表現しているものと、異なることはない。

 いろいろな形として現れているものは、実は本来的には定まった形をもたないのであって、
 本来的には定まった形をもたないからこそ、いろいろな形として現れることとなる。

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