2017年6月17日土曜日

遺伝子多様性を加速する戦略

 ウイルス (virus)
遺伝情報をになう核酸 (DNA or RNA) とそれを囲む蛋白殻からなる微粒子、
と『広辞苑』にある。
〝生命の断片〟ともいえるウイルスが生きているといえるかどうかは境界線上にあるようだ。

 原核生物に属する単細胞の微生物バクテリア
細菌はいろんな方法で染色体の遺伝子の交換を行なって多様化を進めるという。

 有性生殖が進化を加速し種をもたらした
ゾウリムシは単細胞生物だが、ある程度の周期で減数分裂をすることが知られている。
減数分裂で起きる〝交叉〟による遺伝物質の交換の結果、
「ほとんど無限の多様性をもった配偶子の組合せが生じる」とされる。
(「」内は、リチャード・ドーキンス著『延長された表現型』邦訳の「用語解説/交叉」から引用)

 多細胞生物はカンブリア紀に爆発的多様性をみせた
多細胞の生命体の出現は約六億年前といわれる。
同じ遺伝子をもちながら、個体内で機能の異なるクローン細胞として分裂していく、
多細胞生物が、種の進化を加速させたことは容易に想像できる。

 人為選択
チャールズ・ダーウィンは「人為選択」に対する用語として「自然選択」を用いた。
「人為選択」とは人間による動植物のいわゆる「品種改良」のことである。
これに「優生学」が同梱されて明治期の日本に輸入された。
高橋義雄著『日本人種改良論』(明治十七年九月出版)という本がある。
「男女配偶ヲ求ムルノ際ニハ唯内国人ニ就テ良質美性ノ人物ヲ撰フノミナラズ」云々、
と書かれている。
明治十九年には加藤弘之が「人種改良ノ弁」を発表した。曰く。
劣等な日本人の改良には国際結婚もやむなしとした高橋義雄に対して、
加藤弘之は日本人改良の必要性は認めるものの、国際結婚には反対した。
自明の理として、雑婚が進むと、日本人の血がどんどん薄まりついには絶えてしまう。
これでは日本人の改良ではなく日本人の絶滅になりかねないというのである。
欧米でメンデルの法則が再発見されるのは、1900 年のことであり、
明治元年は 1868 年である、つまり、簡単な計算で明治三十一年が、1898 年だ。
先に、雑婚が進めば日本人の絶滅は自明の理のように書いたが、実はその根拠に乏しい。
しかしながらも当時としては、説明不要のことわりであったろう。
このような騒動が進行中の明治二十九年、福沢諭吉が「人種改良」をしたためた。
『福沢諭吉全集』第六巻から引用したい。
著作権者/慶應義塾 昭和三十四年 岩波書店発行のものより。
「福翁百話」人種改良(八十五) 344 ページ
爰に人間の婚姻法を家畜改良法に則とり、良父母を選擇して良兒を産ましむるの新工風ある可し。…………改良又改良、一世二世次第に進化するときは、牛馬鶏犬は其壽命短くして效驗を見ること速なるに反し、人類の改良は割合に遲々たる可しと雖も、凡そ二、三百年を經過する中には偉大の成績疑ふ可からず。

 遺伝子の組みかえ
都合のいい品種の開発が、必ずしも多様性を発現させることには、ならない。
それらの多くは管理された環境でしか生き延びられない「種」だろう。
そして新たにバイオダイバーシティの名の下に……。
合理性に基づく管理判断は、人類の可能性をもおびやかしかねない。
ひとの可能性というのもその多様性であり世代の存続可能性のことだ。

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