2017年5月2日火曜日

カインの妻はアダムとイブの子孫ではないような

 有名な〝カインとアベルの物語〟は、旧約聖書「創世記」の第 4 章に描かれている。
 アダムの妻イブは、邦訳聖書ではエバとも表記されるが、彼らの最初の子供である長男がカインであり、同じく第二子のアベルが次男となることは、おおかたの共通認識となっている。
 人類というのは、この 4 人家族のことであった。はずなのだが。

 カインは弟殺しの罪で、当時、両親がエデンから移り住んでいたエデンの東から、追われて、同じくエデンの東に移り住んだらしいが、追放される際に〝砂漠の危険な無法地帯〟でなぶり殺しになることを極度に恐れていたように記述されている。
 が。だれに? ――殺されると、思っていたのか。
 人類はもはや、その時には他に、彼の父母しか残されていない状況下で、流浪の地で〝誰が〟カインに出会うというのか。
 どうやら、『聖書』では語られていない、別の人類創造の物語が、外伝として想定されているようだ。 ―― というわけで。

「最初の殺人」 ― カインの物語 ― と、都市文明(2016年3月4日金曜日)でも、このことは書いていた。

あなたは、きょう、わたしを地のおもてから追放されました。わたしはあなたを離れて、地上の放浪者とならねばなりません。わたしを見付ける人はだれでもわたしを殺すでしょう。
〔『聖書 口語訳』旧約聖書「創世記」第 4 章 14 節〕

カインが殺されることのないよう、《神》はカインに「しるし」をつけ、
そして、このあとで、カインは妻を得て、子をもうける。

―― と、いう具合に、書いていて、かなり以前から、そういう疑念を抱いていたのだ。
そしてこのたび、進化論と並行して創造論などを調べていて、同種の見解を発見した次第だ、というのは。

 アガシはアメリカでの多起源論の指導的スポークスマンにもなった。彼はこの理論をヨーロッパから持ち込んだのではない。アメリカの黒人とはじめて接した経験が、彼をして黒人は別の種であるという人種理論に変えさせたのである。
 アガシは政治的教義として意識的に多起源論を受け入れたのではない。人種をランクづけることの妥当性は決して疑わなかったが、奴隷制の反対者として自分を数えていた。彼が多起源論を支持したのは、もっと早くから別の目的で行なっていた生物学の研究によるものである。まず、彼は信心深い創造論者であり、反進化論者として唯一のちのちまで留まった一流の科学者である。一八五九年以前は、ほとんどの科学者は創造論者であり、多起源論者にはならなかった。
 …………
 そこでアガシは、つぎのような論を提示する。多起源論は人間の単一性という聖書の教義を攻撃することにはならない。たとえそれぞれの人種が個別の種として創造されたとしても、人間は共通の構造と、共感によって結ばれている。聖書は古代の人々には未知だった世界の地域については語っていない。アダムの物語はコーカサス人種の起源のみに言及しているのである。……
〔スティーヴン・J・グールド『増補改訂版 人間の測りまちがい』 (p.85, 88)

 つまりはようするに、ダーウィンの進化論に断固として反対していた、ルイ・アガシは、〈人種多起源論者(ポリジェニスト)〉であったということだ。
 彼の場合に、聖書に基づく創造論と人種多起源論は、まったく矛盾しないのだ。
 このあたりの事情は、相当に複雑な関係性をもつようなのだが……。

 1873 年に、アガシが亡くなると多くの科学者がダーウィンの進化論をうけいれた。と、これもまた共通認識のようで。
 ひとびとは真理という〈神〉にいたる学として自然科学を信仰しはじめる。
 以下、邦訳聖書の、原文資料など。


〔参考資料 1〕
口語訳『聖書』旧約聖書「創世記」第四章

 (pp.4-5)
 人はその妻エバを知った。彼女はみごもり、カインを産んで言った、「わたしは主によって、ひとりの人を得た」。彼女はまた、その弟アベルを産んだ。アベルは羊を飼う者となり、カインは土を耕す者となった。日がたって、カインは地の産物を持ってきて、主に供え物とした。アベルもまた、その群れのういごと肥えたものとを持ってきた。主はアベルとその供え物とを顧みられた。しかしカインとその供え物とは顧みられなかったので、カインは大いに憤って、顔を伏せた。そこで主はカインに言われた、「なぜあなたは憤るのですか、なぜ顔を伏せるのですか。正しい事をしているのでしたら、顔をあげたらよいでしょう。もし正しい事をしていないのでしたら、罪が門口に待ち伏せています。それはあなたを慕い求めますが、あなたはそれを治めなければなりません」。
 カインは弟アベルに言った、「さあ、野原へ行こう」。彼らが野にいたとき、カインは弟アベルに立ちかかって、これを殺した。主はカインに言われた、「弟アベルは、どこにいますか」。カインは答えた、「知りません。わたしが弟の番人でしょうか」。主は言われた、「あなたは何をしたのです。あなたの弟の血の声が土の中からわたしに叫んでいます。今あなたはのろわれてこの土地を離れなければなりません。この土地が口をあけて、あなたの手から弟の血を受けたからです。あなたが土地を耕しても、土地は、もはやあなたのために実を結びません。あなたは地上の放浪者となるでしょう」。カインは主に言った、「私の罰は重くて負いきれません。あなたは、きょう、わたしを地のおもてから追放されました。わたしはあなたを離れて、地上の放浪者とならねばなりません。わたしを見付ける人はだれでもわたしを殺すでしょう」。主はカインに言われた、「いや、そうではない。だれでもカインを殺す者は七倍の復讐を受けるでしょう」。そして主はカインを見付ける者が、だれも彼を打ち殺すことのないように、彼に一つのしるしをつけられた。カインは主の前を去って、エデンの東、ノドの地に住んだ。
 カインはその妻を知った。彼女はみごもってエノクを産んだ。カインは町を建て、その町の名をその子の名にしたがって、エノクと名づけた。…………

〔参考資料 2〕
『口語 旧約聖書略解』創世記

 (pp.20-21)
〔四・一-一六〕 カインとアベルの物語。……【人はその妻エバを知った】「知る」とは結婚の行為に関連している。【カイン】という言葉の意味は「得る」である。……【アベル】の意味は「息」である。……【わたしを見つける人はたれでも私を殺すでしょう】作者は人類がいかにして増殖しているかについては説明を省略している。ここでカインの恐怖の理由は、殺された近親者の復讐というよりも、むしろ砂漠の危険な無警察の状態を意味するものであろう。……【一つのしるしをつけられた】彼が殺人者であるというしるしではなく、保護のためのしるしである。……【ノドの地】さすらいの地の意味。
〔四・一七-二二〕 カインの子孫と文明。文明の発達に並行したバビロニヤの物語はない。ローマの文明にはこれに並行したものがある。ラチユルスの古伝には、「ラチユルスはその弟レマスの血をもってローマの基礎を築いた」とある。都市の文明は血の上に建てられるのである。カイン族の文明は、ノアの洪水によって絶滅させられるまでつづいたものと信ぜられた。…………

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