2017年1月4日水曜日

スーパー・オーガニック 超有機的進化

 イギリス人スペンサーの「社会進化論」は、戦後には、評判を落としたようです。
 人種差別の理論ともなったというのです。
 たしかに、その著書 『第一原理』 には、次のような文章があります。
(昭和初期の邦訳を参照しましたが、ここでの引用文は、漢字はいまふうのものに変更しています。)

 頭蓋骨の顔面骨に対する比率がより大になる事も同一の真理を例証するものである。…………。そしてこの象跡は他のいかなる動物よりも「人間」に於てより強烈に現れてをり、更にヨーロツパ人の方が野蛮人よりもより強烈である。
 加ふるに、その表示するところの機能について、その範囲と変化とがより大なることによつて、われ等は、文明人なるものが非文明人よりもより複合的な、或はより異質的な神経組織をもつてゐるといふ事を推理する事ができる。そしてまたこの事実は、その脳髄が下方神経節に対して有する比率の増加によつて、一部可見なものがあるのである。
澤田謙/訳『第一原理』 § 121 第二編 第十五章 6 (p.426)

――しかしながら、その〝超有機体〟の理論には、参考にすべきものが、あるように思われます。
 20 世紀最後の年である、2000 年に出版された書に、スペンサーの思想を擁護するものがありました。スペンサーの進化論を〝社会進化論〟と混同してはいけないというものです。
 それは次のように、論じられています。

 以上考察してきたスペンサーにおける進化概念は、今日の分子生物学の知見における「中立」説にもとづくとその本質的な特徴がより明確に浮上してくる。中立説は、ダーウィンの提示した自然選択における「適者生存」概念に新たな解釈を加えて展開された理論である。従来の「適者生存」概念には、自然環境に対して適用する種が進化を遂げ、逆に適用することのできない種は進化することができずに絶滅する、という二元的な進化現象観が前提におかれていた。しかし、中立説では「適用」と「不適用」のいずれにも属さないニュートラルな位置にある「中立」の変異をミクロレベルで保有する種が理論化されている。すなわち「適用」「不適用」の種は従来通りの進化、絶滅を繰り返し、その一方で「中立」の種も自然環境の影響を受けて存在し続ける。しかしその途上で、「中立」の種も分子や遺伝子といったミクロレベルにおいて確実に多様化し、長い時間をかけて可視的な変化を発現させる場合がある。これが「中立」説の骨子である。
挾本佳代/著『社会システム論と自然/スペンサー社会学の現代性』 (pp.191-192)

 『社会静学』においてスペンサーはひとつの重要な概念を明確に提示している。それが、ワインステイン他の政治学研究者がスペンサーの論理の根幹部分であると見なす「公平な自由」概念である。「すべての人間は、他の人間が保持する公平な自由を侵害しない限り、望むところすべてのことを行ないうる自由を保持している」。スペンサーはこれこそが人間の社会関係における「第一原理」であると明言した。
(p.157)

 スペンサーは、「科学」によって、すべてが知られるようになるとは、思っていませんでした。
 どんな理論でも、ある程度までは正しくとも、人類はどこまでいっても、ある程度は間違っているだろうというのです。
 19 世紀。時代は、神の「創造説」にかわる「科学」を求めていたのでしょうか。
 それでも、そこで語られているスペンサーの「進化論」は、〈不可知〉という《神の領域》を前提としたものだったようなのです。
 ダーウィンの『種の起原』に先立つこと、二年、
 1857 年に、〝スペンサーの〈進化論〉〟は上梓されたといわれています。


First Principles : スペンサーの〈第一原理〉
http://theendoftakechan.web.fc2.com/sStage/Spencer.html

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