2017年1月16日月曜日

「パスカルの原理」は流体版「梃子の原理」

パスカルの原理と流体力学の開闢(かいびゃく)


さて、時は 17 世紀にさかのぼり、1600 年代のヨーロッパといえば、
ガリレオやデカルト、ニュートンが活躍した時代であります。
そこにはもうひとりの天才パスカルがいました。

実験装置を使って最初に「真空」を作りだしたのは、
ガリレオの弟子のトリチェリで、彼が水銀柱の上部にあらわした真空は、
「トリチェリの真空」と呼ばれたものです。

ガリレオといえば、近代科学の象徴ともいえましょうが、
彼はアリストテレスの
「自然は真空を嫌う」という教えを、継承していました。
だからなのでしょう、自然が真空を嫌う度合いに応じ、
水銀柱は 76 ㎝ まで、吸い上げられるのです。

迷信にまみれていた、その真空を理論化したのが、パスカルで、
水銀柱の高さに応じて計算される水銀の重さと、大気の重さとが、
(面積ごとの量として)釣合っているという、
当時としてはとんでもない考え方を発表したのです。

 そのパスカルの名が冠された原理が、「パスカルの原理」なわけです。
 これは、油圧ブレーキの仕組みになくてはならない原理でして、
 これがなければ、自動車も容易には止まれなくなるというものです。

 力学的な梃子(てこ)の原理は、〝支点と力点との距離〟と〝支点と作用点との距離〟の比に応じて、働きます。
 簡単にいって、棒の長さが長ければ長いほど、棒の端っこを大きく動かさなければならないのですが、その分だけ、楽に動かすことができます。
 油圧ブレーキの場合は、ブレーキを大きく踏み込む仕組みになっていればいるほど、その分だけ、楽に押すことができます。
 小さい面積を大きく踏んで、大きな面積の装置をじわじわと、作動させる仕組みになっています。

――説明しよう。「パスカルの原理」とは。
 密閉された流体の中では、その圧力は単位面積あたり、どこでも同じである。したがって、
 ブレーキを踏み込む〝力点の断面積〟と、ブレーキが実際に作動する〝作用点の断面積〟との比が、梃子の棒でいうところの距離の比となって、「パスカルの原理」が働く仕組みなのだ。
 つまりは面積がでかいと、その分、そこに働く力は大きくなる。
 これが、油圧式ではなく冗談で中に空気が入っていたりすると、途中で極端に体積が圧縮されてしまい、効くものも効かなくなる。つまり伝えたい力が伝わらなくなっちまう。
 いくら押してもあっちは動かない。力は空気にばかり、作用する破目になる。
 だから〈油圧ブレーキ〉に、〝気泡〟は厳禁なのだ。

さて。1654 年に、その理論は発表されたといいます。
そういうわけで、パスカルは、流体力学の創始者でもありました。
一方で、同時代を生きた、パスカルと同じフランス人のデカルトは、
真空の存在を信じちゃなかった派だといいます。
パスカルより少し年長なデカルトは、解析幾何学の創始者です。

大陸と海を隔てたイギリスでは、その直後に、ニュートンの力学が出現しました。

 1660 年、王政復古を果たしたイギリスで、王立協会につどう自然哲学者たちの集団が勢いを増していました。
 1661 年、その中心人物、ロバート・ボイルが会合で、気体の圧力に関する研究を報告しています。
 空気の体積と圧力とが反比例するという「ボイルの法則」です。
 それは熱力学の、黎明でもありました。


トリチェリの真空 ⇒ パスカルの原理
http://theendoftakechan.web.fc2.com/sStage/entropy/Torricelli.html

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