するとにわかに、「地球の温暖化⇒地球の金星化」という線形の構図が短絡的に立ち現れてきたのでした。
この因果関係は、かのホーキング博士の支持も得ているほどの人気ぶりだそうで、そのことは次の文章で知ることができました。
二〇〇一年一一月に来日し、東大で講演した宇宙論のスターであるホーキング博士も、地球の温暖化問題に関連して発言し、新聞報道によれば、人類がこのまま二酸化炭素の排出を続ければ、金星のようになる、と警告したそうだ。しかし、人類の二酸化炭素放出によって地球が金星化することはない。地球はシステムとして地球温暖化に応答し、その地表温度を下げるからである。
〔松井孝典『地球システムの崩壊』「太陽系の現在:二酸化炭素の温室効果について」より〕
一般常識的な前提として。地球から海がなくなるためには、現在の 1 気圧の条件下で、摂氏 100 度を超える環境に覆われ続ける必要があると思われます。
―― いまのところの環境ではそうはならず。暖かいのは二酸化炭素が原因であるとするなら。
「地球はシステムとして地球温暖化に応答し、その地表温度を下げるからである。」とされた理由は。
地球の表面が暖かくなって、海面から大量に蒸発した水蒸気は、その後、大量の雨となって降り注ぎ、その際に、大気中の二酸化炭素を除去するので、結果として、地表の温度は下がっていく、ということのようです。
これは地球に海があるからこそ可能な、生命維持のシステムとなっています。
ここで、2010 年に刊行された書籍から、引用させていただきますと。
2007 年に気候変動に関する政府間パネル (IPCC) がアル・ゴア元米副大統領とともにノーベル平和賞を受賞したことで、地球温暖化を科学的に裏づける組織の重要性が理解されるようになった。
〔吉田正人「生物多様性の現状」『改訂 生態学からみた野生生物の保護と法律』所収 (p.1) 〕
―― この直後のことになりますが。
2011 年の東日本大震災以降、原子力発電所の評判は悪くなりました。
電力事情だけでなく、日本の論者のあいだで、それに伴って具合が悪くなったのは、二酸化炭素排出の抑制論なのでした。
そもそも、人類による二酸化炭素乱造が地球温暖化を招くというのは、原子力発電所の推進派にとっては、好都合な話でした。それが、原子力発電所の安全神話崩壊と同時に、火力発電所が必要となってしまったのです。
日本では、このような事情も絡んでいました。
ところが、世界では、それ以前に問題が勃発していたのです。
2009 年に〝クライメートゲート事件〟が発生して、二酸化炭素による温暖化論の元締めであるところの組織、国連のノーベル平和賞受賞者「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC = Intergovernmental Panel on Climate Change) に対しての信頼性が相当に失われたようなのです。この事件は、「二酸化炭素による温暖化論」に不都合な真実を覆い隠すために、データを捏造(ねつぞう)したとされているものです。
少なくとも、データを改変するというのは、都合の悪いところがなければ、当事者の発想にすら出てこないでしょう。
この事件の問題点は、科学者への信頼感に関わることなのですが。
不都合な真実というのは、『不都合な真実』の著者アル・ゴア元米副大統領の側にも、あったでしょうか。
日本では無報道に近いが、年が明けた二〇一〇年二月には、一〇〇年ぶりという記録的な大雪に見舞われて震え上がるワシントンの議事堂前にエスキモーの雪の家が作られ、「アル・ゴアの新居」と書いた看板が立てられた。
〔広瀬隆『二酸化炭素温暖化説の崩壊』 (pp.25-26) 〕
日本のメディアへの信頼感も、揺らぐような事態であります。
〝クライメートゲート事件〟が日本では大きく報道されなかったのにも、それなりの理由とか因果律があるのでしょうから。
これらを線形理論だけで解決できるとは、もはや誰もいえないでしょう。
人間の構築した「因果関係」とは、結局のところ、主観に基づいて「自分に都合よく解釈された合理的な枠組み」以上の価値をもち得ないのでしょうか。
地球の自然と生命の多様性は、複雑なネットワーク構造になっていて、
「人間に都合よく解釈された合理的な枠組み」から、容易にはみ出ていくことでしょう。
ひとによる自然の操作は、有名な話ですが、農耕にはじまりました。
そのように、自然を操作する方法の発見は、自然を管理したり支配したりできることと、同じではありません。
現在でも、日照不足などの少しの天候不順が、農作物の収穫に多大な影響を与えています。
―― あと、少しでいいから、日が照ってくれたらいいのに……と。願いは尽きず。
それでも、人間は地球を管理する能力があって、それが可能なのだと思い込みたいのだし、
神のごとき人々は、いずれは「人類保護計画」にも乗り出していくのかもしれません。
チューリング・パターン:自然という複雑系
http://theendoftakechan.web.fc2.com/sStage/Turing.html
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