2017年2月27日月曜日

〈エントロピー〉の熱学的定義と意味

 理解し難い〈エントロピー〉というのは、〝物〟の拡散・散逸にともなう表現が、気体運動論と絡むからでしょう。そこでは恐るべし、分子の状態が「統計力学」的に記述されるのです。
 それでまずは〈エントロピー〉を、〝熱〟限定で考えてみるなら――。

 クラウジウスは、1865 年に〈エントロピー〉の定義として数式を示しました。

そこでその量を S で表すならば、われわれは

dSdq / T

とおくことができる。

 この数式の考え自体はすでに、1854 年の論文で提示されていたようです。
 重要なのは 1865 年の論文では、その量を〈エントロピー〉という新語で表現したことです。クラウジウスが造語の参考にしたのはギリシャ語で〝変化〟を示す言葉だといいます。

 ここで、数式に用いられた記号の意味をひとつずつ、確認していきましょう。

dS 〟の d は、微分方程式に出てくる、 Δ (δ)” と同じで、〝デルタ (delta)〟の d です。
S は、〈エントロピー〉と呼ばれるようになる量です。
dq 〟の d は、〝デルタ〟の d で、q は、〝熱の量〟を表わしています。
/ は、わり算の〝割る(÷)〟と同じです。
最後に、T は、〝温度〟なのですが、これは〝絶対温度 (K)〟を単位とします。

――〝デルタ〟とは、一瞬の間の「変化量」を示しますので、
dq 〟はようするに、「熱量の変化」が想定されています。
 これを、〝温度〟で割るのですが、一般的な摂氏温度(℃)で考えても、数字の大小の差しか変わらないので、意味を把握しようという今回の目的では問題ないといえましょう。
 具体的には、マイナス 273 ℃ が、0 K と変換されるので、たとえば 100 ℃ なら、373 K という数字をもとに、本来は計算しなければならないということです。
 これはたとえば、“ dq ” のほうも単位を考えず 1000 であるとしたとき、
1000 ÷ 100 となるか、1000 ÷ 373 となるかの違いです。
 もしくは、数字を変えれば、
1000 ÷ 10 となるか、1000 ÷ 283 となるかの違いです。

最初の計算の答えは、10 あるいは約 2.7 です。
第二の計算の答えは、100 もしくは約 3.5 です。

 クラウジウスの問題提起は「〈エントロピー〉が増大する」ということでした。
 そして、自然現象は「放っておけば、熱は高い方から低い方へ一方的に流れる」ということなのでした。
 このことがどちらも「熱力学第二法則」と呼ばれるものなわけです。
 これは、〝熱量〟が、どれほどの量でも、それが移動したときには、
自動的に温度は下がっているので、変化の前後で、計算の答えとしての、

変化した〈エントロピー (dS )〉は、必ず増えている」ということなのです。

 つまり、必ず「〈エントロピー〉が増大する」ということの意味は、
「熱の移動が起きたら、その〝熱の量〟を、熱が移動する前よりも、常に小さな数字で割ることになるので、必ず答えは前よりも大きくなる」
ということなのです。

 これが、「熱力学第二法則」の帰結としての「エントロピー増大の法則」の本来の意味となります。
 クラウジウスが発見した内容というのは結局、もっと大きい数字で割ると、答えは必ず、もっと小さくなる、という算数の結果なのでした。
 これがどうして凄いのかというと、それを「自然の非可逆性」の理由として位置づけようとしたからなのです。
 熱が移動すると、割り算の答えが「いつも大きくなる」と。
 常人に、そうそう可能な発想ではないと、断言できる閃きなのです。

――それで。
インクが水に落ちた際の、増大する〈エントロピー〉の算出方法については、また、いずれ可能な限りにおいて……。


気体運動論 & 電磁気学(場の理論)
http://theendoftakechan.web.fc2.com/sStage/entropy/Faraday.html

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