2017年2月15日水曜日

合理的な〈最大効率〉の追求とエントロピー

 19 世紀、熱のエネルギーと力学的エネルギーが等価であり交換可能だったというのは、実に大発見なのでした。
 力学的エネルギーは「運動エネルギー」と「位置エネルギー」をたしたものだといわれます。そのエネルギーが熱の形態で出入りすることが〈エンタルピー〉の変化として表現されました。

 そしてエネルギーの最大効率に関する考察からやがては〈エントロピー〉が一方的に増えていくことが検証されたのです。
 どのように頑張ってみても、エネルギーのロスは発生してしまうのです。
 そして熱は、均一になろうとする傾向があって、それも、一方的で非可逆的なものでした。
 結果。均一になった空間は、外部からの刺激がない限り、そのままの状態が延々と続くのです。
 またそこから、〈廃熱〉イコール〈エントロピー〉という解釈もでてきます。

 たしかに、〈廃熱〉になってしまったエネルギーを回収して再利用することは、困難です。
 その再利用には、回収された以上のエネルギーが、往々にして必要となります。
 ですから、〈廃熱〉も一方的に増えていくものです。
――が。〈廃熱〉がそのまま〈エントロピー〉なのではありません。

 〈廃熱〉の説明は、あくまでも一例としてであり、「たとえば」という〝但し書き〟が不可欠なのです。
 ところが、いつのまにか、そういう〝但し書き〟はそれこそ一方的に非可逆的に失われて、
――〈廃熱〉イコール〈エントロピー〉という便利な解釈もでてきてしまうのです。

 〈エントロピー〉が増えた状態を一般に「混乱した状態」とか「混沌としている」とかいいます。
 どうやら、均一状態というのは、混乱している様子をさすみたいです。
 見た目が一様であるのは、整然と美しい場合もあると思うので、おそらくは整然としていない均一状態がここでは想定されているのでしょう。
 そうしてこのあたりで自分の頭のエントロピーが増えてきて、「混乱状態」となります。
 そうやって。どうやらようやく、〈エントロピー〉が少し理解されるのでした。
 つまり「ノイズが増える」ことが「エントロピーの増大」ともいえるのでした……。たしかに。こんな話は、ほおぉっと、してきます。

 ここで気をつけなければならないのは、もうひとつ。
 〝排熱〟はそのまま〝廃熱〟と同じなのではありません。
 時に〝排熱〟には、まだ、利用されていない価値が残されています。
 けれども、〝排熱〟も〝廃熱〟も〝エントロピー〟も全部ノイズになってしまえば、それは混同可能です。

 そういう混同され混乱した状態を好む御仁がおられるようで、〈エントロピー〉が相当に好きだとしか思えません。

 ところで、〈エンタルピー〉は熱に関する状態量だったのですが、同じ状態量でも〈エントロピー〉は熱に限って使われるものではないようです。
 有名なところで〈情報エントロピー〉というものがあります。
 「情報のエントロピーが増大する」というのは「雑音(ノイズ)と成り果てた情報が増える」ということです。
 いくら気をつけても、インターネットは、その加速装置です。

改めて詳しく資料を見たいと思いますが、量子論の創始者プランクは、
〈エントロピー〉に関する誤解を憂 (うれ) えていたようです。
そのひとつが〈エントロピー〉を熱エネルギーに限定した誤解です。
たとえばインクが水に落ちても〈エントロピー〉はあっという間に増えます。
―― 1922 年の、とある脚注に、こう書いているようです。

この場合は、「エネルギーの散逸」というよりは「物質の散逸」という方がより適切であろう。


時の矢 : エントロピーの増大
http://theendoftakechan.web.fc2.com/sStage/entropy/Clausius.html

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