2017年3月3日金曜日

〈エントロピー〉と拡散する分子の状態

Sk log W

 これは「ボルツマン方程式」として有名な数式です。
 名称には〝ボルツマン〟とありますが、作成したのは、プランクです。
 ボルツマンの考えをもとに、プランクが、この簡潔な表記を、導き出しました。
 量子論の祖プランクが「輻射の法則」を発見したのは、1900 年で、それが〈エネルギー量子仮説〉提唱の年とされています。
 19 世紀最後の年に、宇宙の実相が〝連続的(アナログ的)〟ではなく、〝離散的(デジタル的)〟になり始めたという、いきさつになります。
 その当時、世界が〝原子〟という「つぶつぶ」で構成されているということすら疑われていた時代はなお続いていました。
 1900 年 12 月に口頭発表した論文、「正常スペクトル中のエネルギー分布の法則の理論」の中でこの式を書いたのだと、プランク自身が 1948 年の回想で述べているようです。
 〈ボルツマン定数 k 〉も、1901 年に提出となったその論文で、プランクが計算した数値だとされます。
 k は 1.346 を 10 の 16 乗で、割ったものでした。
 〔単位は「エルグ毎絶対温度 (erg / K) 」〕

 現在では、k は 1.380658 を 10 の 23 乗で、割ったもの〔単位は「ジュール毎絶対温度 (J / K) 」〕とされています。
 ケタ数(乗数)の違いは、エネルギーの単位が、ジュールとエルグで 7 桁違うことに起因しています。
 その 10 の掛け算を説明してみれば――。
 1 を最初の数とすれば、10 進法に限らず、ひとケタ上がった最初の数は 10 となるので、10 の掛け算をするごとに、1 桁増える仕組みになっているということです。

10 の掛け算では、そのことに加えて、
 10 の 2 乗 × 10 の 3 乗 = 10 の 5 乗
というのが、
 10 の (2+3) 乗 = 10 の 5 乗
になるという仕組みがあります。
 これで、桁数の計算は、掛け算から、足し算になって、簡単になった、というわけで、「対数」なるものが発明されます。

 通常は、〈値 A 〉を〈繰り返し掛ける回数 B 〉という計算では、「答え」を〈指数関数 C 〉といいます。
 このとき、〈繰り返し掛ける回数 B 〉を「指数」といいますが、この「指数」を求める計算式を作って、計算しようとする際には、その「答え」となるべきかつて「指数」と呼ばれていたものが、〈対数関数(たいすうかんすう) B 〉となります。
 それで、〈指数関数(しすうかんすう) C 〉だったものも、計算式の〝計算結果〟ではなくなるので名称変更となり、対数を求めるもともとの数として「真数(しんすう)」と位置づけられることになるのです。

〈値 A 〉の名称を「底(てい)」といいます。
そして〈繰り返し掛ける回数 B 〉が「指数(しすう)」から「対数(たいすう)」に名称変更となりました。

 ケタ数の話はどうなっているのかといいますと、対数の計算では、
B = (log A) C という表記方法となり、〈 A 〉が、10 であれば、
「〈 C 〉の桁数マイナス 1 」が、〈 B 〉となっています。
(これがゼロの数と同じになるというのは 10 の 2 乗 は 100 で 3 桁となりますよって)

 上の「ボルツマン方程式」でいうと、
〈対数〉の計算というのは、〈底〉を何乗したら、〈 W 〉になるか、という計算式のことになります。
 この式では、log と書かれていますが、〈底〉は 10 ではなく、e なので、log e = ln という表記もあります。
(恐るべきことに〈底〉が 2, e, 10 の場合には〈底〉の省略が可能なのです)
 e というのは、自然対数の底というものなので、これは「自然対数」を求める式なのだという説明になりますが、このあたりから、e によって混乱が拍車されるので、あまり深くは考えないようにします。

 結局、〈自然対数の底 e 〉を何乗したら、〈 W 〉になるかという、計算式に、
〈ボルツマン定数 k 〉を掛けたものが、「ボルツマン方程式」ということになります。

 この時。〈 W 〉はたとえば、水に落ちて拡がっていくインクの 1 滴に含まれる分子が動いた結果、分子の位置の状態がどのように変化していくかを計算した〈場合の数〉を表現したものなので、もはや考えるのはやめにして。
 それでも、実際に実験してみなくても、その〈場合の数〉が刻々と大きくなっていくのは目に見えるようです。
――そういうわけで、その計算結果の〈対数 S 〉もまた、一方的に増えるばかり、という次第となるわけです。

 これは、「統計力学」的〈エントロピー〉の表現だといわれているものです。
 以上の説明は、そこに表示された記号の表面的な意味をかすめたほどにもあらねど。

 次の資料ページの末尾に、〈対数 S 〉の演算例を少々、計算式と一緒に書いてみました。

熱力学:統計力学:量子力学
http://theendoftakechan.web.fc2.com/sStage/entropy/Maxwell.html

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