2019年9月29日日曜日

円積曲線(円積線)の作図と操作

 さて、古代のギリシャに発生した円正方化問題が遠く日の本の国では《円積問題》と広く呼称されている由縁は古来日本に《円積法》と呼ばれる〈円の面積の計算方法〉が和算家の間に普及しておりそれにともなって《円積率》もまた精度の高いものが使用されていた次第によると考えられるのでした。
 タイトルにある《円積曲線》というのは、《円積問題》の解決に深く関わるとされたゆえの名称らしいのですけれど、ここらで〈円積〉の概念に混乱が生じてまいります。混乱の個人的な現象としては過去形なので、つまりはまいったのです。

 ◯ 辞典など繙いてみましょう。多く語られていたり語られていなかったり、はたまた語句そのものが項目として採用されていなかったり。ちなみに小学館発行の『日本国語大辞典 第二版』には、【円積(えんせき)】は「円の面積」と説明されていました。


『広辞苑 第四版』

さんだいもんだい【三大問題】

〔数〕古代ギリシアの幾何学における作図の問題。角の三等分、立方倍積問題、円積問題の三つ。いずれも定規とコンパスだけでは作図不能。

えんせきもんだい【円積問題】

与えられた円と同面積の正方形を作図する問題。古代ギリシアの幾何学三大問題の一。一八八二年にリンデマン (C.Lindemann 1852~1939) が作図不能を証明。円正方化問題。


『算数・数学用語辞典』

武藤徹[むとう・とおる] 三浦基弘[みうら・もとひろ] /著
2010年06月30日 東京堂出版/発行
 (pp. 22-24)
えん [circle]
 コンパスで描いた曲線が囲む平面の一部を円といいます。また、この曲線を、この円の周といいます。円の周の一部を弧といいます。
 コンパスを使わない一般的な定義は次のようになります。
 平面上の 1 点 O から等距離にある点は、1 つの曲線を描きます。この曲線の囲む平面の 1 部を円といい、点 O を、この円の中心といます。また、この曲線を円周といいます。
 円の中心と円周上の点を結ぶ線分を、半径といいます。また、円周上の 2 点を結ぶ線分を弦といいます。長さが最大の弦を直径といいます。円の直径は、円の中心を通ります。
 円の弦は、円周を 2 つの部分に分けますが、大きい方を優弧、小さい方を劣弧といいます。あわせて、単に弧といいます。

円周 えんしゅう [circumference]
 円を囲んでいる曲線を、円周といいます。
 円を放物線や双曲線の仲間と考えて、円周のことを円と呼ぶこともあります。天体の円軌道というのは、その例です。このときは、円は曲線となり、面積を持たないことになります。

円周率 えんしゅうりつ [ratio of circumference of circle to its diameter]
 円周の長さと直径の長さとの比を円周率といいます。円周率は、回りを表すギリシャ語ペリフェレイア (περιφέρεια) の頭文字をとって、π(パイ)で表します。
 π = 3.1415926535897932384 …
が知られています。計算機の進歩によって、現在、その値は 2 兆桁を超えて計算されています。

円積問題 えんせきもんだい [quadrature of circle]
 与えられた円と等しい面積を持つ正方形を、定規とコンパスを有限回使うだけで作図せよ、という問題です。

円積率 えんせきりつ [ratio of area of circle to its circumscribed square]
 円と外接正方形との面積比を、円積率といいます。
π / 4 = 0.7853981 …となります。
古代エジプトでは、円の面積を、直径からその 9 分の 1 を引いて平方して求めました。
直径 9 の円の場合、円の面積 8 × 8 = 64 、この円を囲む正方形の面積は 9 × 9 = 81 ですから
円積率は 64 / 81 = 0.790123456 …で、現在との誤差は 0.60% でした。
 和算家吉田光由の『塵劫記 [じんこうき] 』では、円積率 0.79 が用いられています。


『算数・数学活用事典』

武藤徹[むとう・とおる] 三浦基弘[みうら・もとひろ] /著
2014年09月25日 日本評論社/発行

4 章 幾何の誕生

 (p. 72)

エリスのヒッピアス [Hippias (前 460 ? ~ ? )]

 けばけばしい紫の衣を身に着けて現れ、指輪をはじめ身に付けているものは、全部、自分で作ったといったことで有名です。彼は円積曲線 [えんせききょくせん] (quadratrix) を利用して任意の角の 3 等分に成功しました。
 エリスのヒッピアスは、任意の角の 3 等分を実現するために、右図のように、正方形の 1 辺を、2 等分、4 等分、8 等分、… し、また、直角を、2 等分、4 等分、8 等分、… して、それらの線分の交点の描く曲線を利用すると、任意の角に対応する辺を 3 等分するとき、対応する任意の角が 3 等分されることを発見しました。
 この曲線は、後に、円積問題の解決に役立つことが分かり、円積曲線と呼ばれることになりました。


☝ 上記の引用文中にある「右図」が、☟ おおよそ下の「図 1」の右半分に該当します。


✥ ヒッピアスの円積曲線 ✥

τετραγωνίζουσα

● 四角形 ABCD は正方形で、PD の曲線が、円積曲線にあたる。
〔 ※ 右回転が角度のプラス、左回転がマイナスの角度になっています。図 1 では、角度 0 度は、AD のラインに一致。〕

角度 °  1  2

✍ 辺 AB = AD の長さを基準として、角度の変更に応じて、

 45° で半分、
 30° で 3 分の 1 、
 60° で 3 分の 2 の割合等々で、

辺を分割するラインが移動し、交点座標の変化が確認できます。

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