2019年9月27日金曜日

《円積率》とは和算の用語であるような

 さてこのたびもやうやうひと月をすぎて、まずはあらため π なる数値へのみちゆきとあひなりまするがしかしては、まへ口上はさておき、さてはここに《円積率》がひとつにさだまるといふことにつき、いにしへよりの物語を紹介いたしませう。はてさて《円積率》とは何のことやらいつかうに。

―― これはすなはち、正方形には互ひに相似な図形しかなく、円でも同様ゆへに、円と外接する正方形の面積比は一定となる、といふいにしへからの次第にござります。

 ◯ さてもにはかに ―― にわかに登場した「円積」とは、どうやら和算の用語で「円の面積」を指し示すようであります。


『和算用語集』

(代表)佐藤健一[さとう・けんいち]/著
2005年10月20日 研成社/発行

 (pp. 10-11)

円周法(えんしゅうほう)

 円周率のことである。円率ともいった。

円積法(えんせきほう)

 円の面積を求める方法である。和算では円の面積を求めるのに、(直径) × (直径) × (円積率) で求めていた。江戸時代初期では円積率は 0.8 または 0.79 が多く使われていた。現在の π / 4 に相当する。

円積率(えんせきりつ)

 円の面積とその円に外接する正方形の面積との比で円周率 π の 1 / 4 である。


  正方形の 1 辺の長さが 2 倍になると、面積の比率は長さの倍率の 2 乗で 4 倍、 3 倍だと、3 2 乗の 9 倍になります。円では、同様に半径の倍率の 2 乗になるわけです。
 ⛞ 円と外接する正方形との面積の比率は、円の半径を r とするなら、正方形の 1 辺の長さは 2r となって、面積の比(円の面積:正方形の面積)は、π  ∕  4 と計算されます。
πr2 : (2r)2 = πr2 : 4r2 = π : 4
document.getElementById('pi_square').innerHTML = Math.PI/4;
π  ∕  4 =

 ⛞ 半径が r の円周と、外接する正方形 4 辺の合計との比も同じく、
2πr : 4(2r) = 2πr : 8r = 2π : 8 = π : 4
であり、試しに π = 3.14 として、具体的な数値で計算してみましょう。
● r = 100 と仮定してみれば、面積と円周は
πr2 = 3.14 × 100 × 100 = 31400
2πr = 2 × 3.14 × 100 = 628
■ いっぽう、正方形の面積と、4 辺の長さの合計は、
2r × 2r = 200 × 200 = 40000
2r × 4 = 200 × 4 = 800
 ◎ 面積と長さの比率の計算
・ 31400 ÷ 40000 = 0.785
・ 628 ÷ 800 = 0.785
  ここで、円周の長さと同じ長さの、正方形の壁を作って、面積を比較してみましょう。
■ 正方形の 1 辺は、2πr ÷ 4 となるので、
(2πr ∕ 4)2 = 4(πr)2 ∕ 16 = (πr)2 ∕ 4
● この計算結果と、円形との面積の比率は
(πr)2 ∕ 4 ÷ πr2 = π2r2 ∕ 4πr2 = π ∕ 4
◆ 具体的に、π = 3.14 とすれば、正方形での面積は 24,649 と計算され、円形では 31,400 でした。
・ 24,649 ÷ 31,400 = 0.785
 ⛞ そういうわけでこの計算結果から、同じ長さの壁だと、今度は正方形よりも円形のほうが円積率分だけ、床面積が大きくなると理解できるのです。
―― となれば、倉庫を建造する場合、材料費を考えると円形の建物が、効率が良いと判明する次第です。

 さうするうち、古代のギリシャにて円正方化問題が発生いたしました。
―― 言の葉は時系列を超越しこれが世に《円積問題》といはれるものではあります。

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