2017年11月16日木曜日

変更された〈カンブリア紀〉以前の時代

 少し前に、先カンブリア時代というのは、5 億年以上も昔のカンブリア紀にいたるまでの、約 40 億年間をいう、と書いたのですが、この〈先カンブリア時代〉の期間について、1994 年に修正があったようです。
―― 文献から参照します。

 六億三〇〇〇万年前のマリノアン氷河期(スノーボールアースの時代)が終わった後も、カンブリア紀が始まるまでの一億年弱の間、かなり寒冷な時代が続いていました。この期間については、近年国際委員会によって正式にエディアカラ紀と呼ぶことが決定されました。また、カンブリア紀の始まりは、カナダ・ニューファンドランドに見られる五億四二〇〇万年前の地層を基準とすることも近年決まりました。
…………
周りの文献を見渡してみると、五億七〇〇〇万年前からカンブリア期が始まると書かれている場合も多いと思います。しかしそれは以前の定義で、一九九四年に国際委員会は五億四二〇〇万年前からカンブリア紀が始まるという修正案を出し、正式な定義となりました。ですので現在のところ、カンブリア紀の始まりは五億四二〇〇万年前ということになります。
宇佐見義之『カンブリア爆発の謎』2008年 技術評論社 (p.51, p.81)

 カンブリア紀以前の化石資料については、スティーヴン・ジェイ・グールド『ワンダフル・ライフ』(“WONDERFUL LIFE” 1989) の日本語版 79 ページに、次の記述がある、と前回に書いたのですけれども、これにも、期間の修正が必要になっています。
エディアカラ動物群から、現生的な体の設計プランが固まったバージェス動物群まで、一億年の隔たりがある。

―― 『カンブリア爆発の謎』の記述をもとに、整理してみます。

6 億 3000 万年前にマリノアン氷河期が終わった後、カンブリア紀が始まるまでの 1 億年弱の間を、エディアカラ紀と呼ぶ
5 億 4200 万年前、カンブリア紀が始まる

5 億 8000 万年前に起こったガスキアス氷河期より後の時代のものをエディアカラ生物群という。(p.52)
5 億 6000 万年前のものが、エディアカラ生物群としては最も古いと推定される。(p.65)

カンブリア紀、澄江動物群が生きた時代はバージェス動物群よりも 2000 万年ほど古いとされている。(p.98)
―― 同書の 93 ページにある図では、
「澄江動物群」は、5 億 2100 万年前と 5 億 1700 万年前の間に位置づけられている。
「バージェス頁岩動物群」の位置は、5 億 1000 万年前と 5 億 600 万年前の間である。

―― ちなみに、サイモン・コンウェイ・モリス『カンブリア紀の怪物たち』〔1997年 講談社現代新書〕の「用語集」では、次の通り。(pp.279-282)

バージェス頁岩 (Burgess Shale) 約 5 億 3000 万年前の中期カンブリア紀の地層である。
澄江 (Chengiang) 南中国雲南省に露出する約 5 億 3000 万年前の前期カンブリア紀の堆積層。
エディアカラ動物群 (Ediacaran fauna) 原生代最後期、約 5 億 6000 万年前の化石群。

―― もうひとつちなみに、池田清彦『38億年 生物進化の旅』〔2010年 新潮社(初出:「波」 2008年 12月号 ~ 2009年 12月号)〕では、次のように記述されています。(p.56, pp.58-59)

 カンブリア大爆発の痕跡として有名なのが、バージェス頁岩[けつがん]から発見された生物の化石群である。バージェス頁岩は、古生代カンブリア紀の中期にあたる、いまから約五億一五〇〇万年前に堆積した地層である。
…………
 なお、中国の雲南省澄江[チェンジャン]でも、バージェス頁岩と同じ時期のカンブリア紀中期の地層から、化石群が見つかっている(同じ時期といっても、バージェス頁岩よりも澄江のほうが一〇〇〇万年ほど古いのだが)。それらは「澄江生物群」と呼ばれる。

―― そういうわけで、技術の進歩に伴い、発見と知見も日進月歩で、新しくなっていくのでしょう。
 核心の部分、〈カンブリアの大爆発〉は稀に見る勢いで起きた、という見解に変化がないのは幸いです。
 ただ、その爆発的な進化による繁栄の時代は、数百万年のケタではなかったようです。
 そしてその物語は、隣接する時代のエディアカラ紀の動物群が姿を消したほんの数千万年後のできごとだったのだと……。


カンブリア大爆発
http://theendoftakechan.web.fc2.com/ess/Cambrian.html

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