2017年8月25日金曜日

人類の定住と宗教施設と酒

 2 万年前に、最後の氷期が終わったといいます ――。
 それ以前、氷期は 10 万年のサイクルで繰り返されていて、現在にひってきする間氷期は約 12 万年前のイーミアン間氷期にまでさかのぼらなければならないようです。
 1 万年前からは、気候が安定して、その温暖化は現在にいたるまで継続しているわけです。
 そのころから定住と農耕がはじまり、やがて集落は都市化していきました。
 人類が繁栄を謳歌する時代が到来したのです。
 次の氷河期まで、もう少し余裕は残されているでしょう。
 さて。氷期の終わりの雪どけは、およそ 8400 年前に「黒海の洪水」をもたらしたとも唱えられています。

 氷河期ののち、氷河は融(と)けて後退し、海に流れ込んだ。海の水位は平均すると約 130 メートル上昇したと考えられる。その水が、地中海からマルマラ海に流れ込み、さらに黒海に流れ込んで、現在の姿を形成したというのが概要だ。
〔 NHK スペシャル取材班著『ヒューマン』2012 年 角川書店刊 (p.312)

 そのころに農業がヨーロッパ全体に拡がっていったのは農耕民の避難によるとする仮説も提唱されています。
 バベルの塔とは無関係に、洪水が、技術をもったひとびとを地のおもてに散らしたという話になりましょうか。

 ところで、定住と農耕革命は、人類に土地の占有と継続的な貧富の差をもたらすことになりました。が ――。
 革新(イノベーション)の黎明期に、1000 年ほどの期間が必要だったともいわれます。
 農業を成功させる地道な革命の、幾世代にもわたるモチベーションを維持できたのは、あるいは宗教的信仰の作用によるという話があります。

定住傾向 ⇒ 信仰 ⇒ 農耕、という順番になるようです。

 食料の需要に応じて農耕が自然発生したというのは、よくよく考えてみれば不自然で、いまでは人気がないようです。
 現代の知恵の集積と技術をもってしても、新しい品種を新しい土地に根付かせるのは容易ではありません。いにしえの時代の失敗は、必然的にその間の飢えっぱなしを招くと思われ、ほかからの援助は欠かせないでしょう。
 その幾星霜を、ひとびとはどのような情熱で耐え忍んだのでしょうか。
 ここで注目されるのが、トルコにある、「世界最古の宗教施設」といわれる〈ギョベックリ・テペ遺跡〉です。
 大小の石柱で構成された建造物をもつ、巨大な構造の遺跡です。

 遺跡の年代は、1 万 1600 年前~ 1 万 800 年前頃とされている。
…………
 ギョベックリ・テペ遺跡のそばにあるのは、…… カラジャダー山である。
 馴染みのないこの地名は、私たちにとってもっとも身近な植物のひとつが自生していた原生地だ。その植物とはコムギである。
 シュミット博士はその方角を指差しながら、教えてくれた。
「コムギの原産地のカラジャダー山はこの方向、ここからわずか 60 キロの場所にあります。そして、きわめて初期の農耕遺跡も、この周辺から見つかっています。当時、この地域でもっとも重要なイノベーションといえば、植物の栽培化と動物の家畜化なのです」
〔『ヒューマン』 (p.225, p.267)

その小麦を使って、ビールを醸造していたのではないかとも、いわれます。
そういえば、日本で主食の米も、アルコール飲料の主原料となっています。

 多くのひとが集まって造営された巨大な宗教施設で、アルコールがふるまわれて、やがて農業も発展したというような、めでたい話でしょうか。
 日本古来の儀式にも、酒はつきものなのですし。―― なれば。
 アルコールの味を覚えた人類が農耕革命を漸次実現したというのも、また一興(いっきょう)でしょう。

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