2017年12月18日月曜日

モンモリロナイトという粘土と生命

 モンモリロナイト (montmorillonite) という粘土鉱物について、今年の 7 月に 2 回とりあげています。
 土と生命の起源を関連づけた科学的な研究の話です。その当時には「モンモリロナイトについては、他の邦訳書でも最近のもののなかに、記述を見ることができましたが、日本人による一般向けの著書では未確認です」と、書いておりました。
 他の邦訳書というのは、ピーター・ウォードとジョゼフ・カーシュヴィンクの共著生物はなぜ誕生したのか(“A NEW HISTORY OF LIFE” 2015) です。

 ヌクレオチド三〇個以上の RNA 鎖を初期の地球上(またはその内部)でつくるには、土台になる粘土が必要だったと思われる。とくに適しているのがモンモリロナイトという粘土鉱物の一種だ。この仮説によれば、液体を漂っていた単体のヌクレオチドが粘土にぶつかる。ヌクレオチドは粘土とゆるやかに結合し、その場に固定される。こうして粘土鉱物のどこかの場所にヌクレオチド三〇個以上の鎖ができる。粘土と強く結びついているわけではないので離れやすい。もしも長い RNA 鎖が何本も集まったものが存在して、それが脂質に富む液体の小さな泡(石鹸の泡のような)の中に取り込まれたとしたら、最初の原始細胞の誕生となる。
〔『生物はなぜ誕生したのか』 梶山あゆみ/訳 2016年 河出書房新社 (p.78)

 これに次いで、ようやく日本人による記述も、一般向けに書かれた出版物のなかに見ることができています。
 以前にも参照した資料の日本宇宙生物科学会編『生命の起源をさぐるに収録された論稿、澤井宏明「生命の情報を担う RNA のはじまりにありました。

 粘土鉱物の一つのモンモリロナイトは重合反応を促進させるはたらきがあり、金属イオン触媒と同じような反応経路により RNA オリゴマーが生成する。粘土鉱物の表面には RNA 合成のモノマーであるヌクレオチドやアミノ酸が吸着する。モノマーが粘土鉱物の表面に吸着した上で一〇量体くらいまで重合することをフェリスらが見出した。このような条件下でモノマー単位を次から次へと加えていくと、縮重合反応が進み、五〇量体くらいまでのびていく。RNA の鎖長が五〇量体くらいまでのびれば、生物的な機能の最低限の役割を果たせるのではないかと考えられるが、このモデル実験で得られた RNA が実際に何らかの生物学的な機能をもつかどうかはわかってない。
〔『生命の起源をさぐる』2010年 東京大学出版会 (pp.48-49)

―― そういえば分子進化の起源に触れ、サイモン・コンウェイ=モリスの著書進化の運命(“Life's Solution” 2003) では、次のように述べられていました。

 まとめよう。もしある種の鉱物が、いやむしろ多くの鉱物が、生命に至る最初のステップで、重合化などの触媒という大事な役割を果たしていなかったとしたら、その方がかえって驚きだ。しかし、どうしたらその次のステップに行けるのかは、あいかわらず五里霧中である。
〔『進化の運命』 遠藤一佳・更科功/訳 2010年 講談社 (p.111)

 モンモリロナイトという粘土鉱物が、生命の起源に関わっているのではないかという研究は、どうやら現代の生命合成の物語へと進撃を開始しているようです。
 粘土をベースに遺伝情報を形成していったというのは、もはや神話や夢物語ではなく、現実の話として展開しつつあるようなのです。


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