その最後に収録されている 「あとがき」 には、《ハヤカワ・SF・シリーズ「神への長い道」より再録》 と付記されています。219~220 ページより、抜粋しますと、
「先史時代以来、一九四五年までの技術発明を、高さ十センチのグラフにあらわすなら、一九四五年以降、現在まで、わずか二十年間の発明は、十三階建てのビルの高さで表現しなければならない、ということです。」
と、ありますので、「あとがき」が書かれたのは、1965 年頃であることが推測できます。
それが文庫化された昭和 50 年というのは、1975 年になります。その 5 年前、1970 年には、大阪で万国博覧会が開催されています。
アポロ 11 号が月に着陸したのが、その前年の 1969 年で、万博会場のアメリカ館には、月の石が展示されていて、まさしく長蛇の列のにぎわいなのでした。
スタンリー・キューブリック監督が映画化した 「 2001 年宇宙の旅」の公開 は、1968 年のことです。同年に、作家アーサー・C・クラークが小説版を、発表しています。
その映画と小説で描かれた、〈スター・チャイルド〉とはまた異なった、宇宙的進化の物語が「神への長い道」なのですが、単行本一冊の分量には遠く、文庫本で 90 ページ分に足りない長さです。したがいまして、文庫本も作品集となっています。
最初の刊行から、もう、半世紀が過ぎて、小松左京も故人となりました。
現在の科学が宗教の代替品とみなされてからも、一世紀以上が、経過しました。
「科学は宗教から出て、認識的および知的機能にかんするすべての面で、宗教にとって代ろうとしている。」
〔デュルケム 1912 年『宗教生活の原初形態 下』「結論」(岩波文庫より)〕
思えば、人類は、神への長い道を、辿りゆこうとしてあがいているのかも知れません。しかしながら、科学と宗教が合体した暴虐は、かえってその道を遙けく遠くしているようです。
小松左京が描く 未来のスケッチ は、その最後のシーンに、モノローグを組み入れます。
「おれたちよりも、もっともっとすばらしい存在を、おれたちを踏み台にして、生み出してくれるのでなければ、踏み台にされた猿たちは、浮かばれない。――」
と。
そして再録された「あとがき」には、宇宙空間から見た地球、という、印象的なフレーズが、221~222 ページに記されています。
SFファンなら、誰でも見たことのあるあの惑星を見てしまった今となっては……裸形の「時間」と「宇宙」の中に吊り下げられた、あのごつごつした惑星を見てしまった今となっては、
〈神のロゴス〉とその義
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