日没後、黄昏の残照の中に、一番星が光を放ちはじめる。
明けの明星(みょうじょう)といい、宵(よい)の明星という。
いまではそれは、金星という同じ星であると、教えられている。
太古のひとには、しかし別の意味を知らす輝きであっただろう。
その星について紀元前のローマ人キケロは、同じひとつの惑星であるウェヌスの星すなわち金星と、書き残している。
夜明けには「ポースポロス」と呼ばれてそのラテン語を「ルキフェル」といい、黄昏(たそがれ)には「ヘスペロス」と名を変えるが、それは同じ星だ。
宵の明星はまたラテン語で “vesper” ともいうらしいが、キケロは、「ヘスペロス」の語を用いている。
夜明けと黄昏に、それぞれ空の東西で光る星。
イエスが生まれる前に、ラテン語ルキフェルは、両方の意味を、すでに含んでいたのだ。
英語のルシファーは、サタンの異名(いみょう)であり、もっぱら、明けの明星を指し示す。
ところが、その同じ暁(あかつき)の星は、ユダヤの教えでは、メシアの暗喩(あんゆ)であるという。
明けの明星はまた、新約聖書でイエスの象徴であって、それは黙示録でも言及されている。
さらに、カトリックの教義では、夜明けの星は、イエスの母――聖母マリアをも、意味する。
彼女はイエスに先駆けてこの世に生を受け、そしてひとびとの太陽であるイエスを産んだのだから。
夜明けの星は、なぜかここでも多くの意味を具有する。
おそらく人類は未だ神話の時代を生きているのだ。
phosphoros : 夜明けの星
http://theendoftakechan.web.fc2.com/atDawn/quest/phosphoros.html
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