2018年8月18日土曜日

大山 と 隠岐 :〈伯耆大山〉と海上の道

 ○ 与謝野晶子は、大山から隠岐を見て歌に残した。

大山寺(だいせんじ)笹のいく葉の隱岐見えて伯耆の海の美くしきかな
378〔初〕山陰遊草 ― 冬柏 昭 5 ・ 6
〔『定本 與謝野晶子全集』 「落葉に坐す」 (p.142)

 ○ 田山花袋の紀行文では、沖から大山を見た、遠景の美しさが述懐された。
―― 先に語られる、御来屋の風景は、大山のふもとの日本海に面した名和町(現大山町)から隠岐の島が見えるという話題だ。

 御來屋[みくりや]に來ると、船上山はやゝ後に、大山[だいせん]の大きな山彙の一部が段々前にあらはれ出して來る。前には街道[かいだう]の松並木を隔てゝ、をりをり海が見える。好い景色である。
『隱岐[おき]は見えないかな』
『天氣[てんき]の好い日には見えるんですがね。今日は曇[くも]つて見えません』
 などと誰かが言つてゐる。
…………
地藏岬の少し手先の鼻が、右の方の海に突出[とつしゆつ]してゐる。大山から御來屋[みくりや]方面にかけて一目に見わたされる。
『絶景だ。江[え]の浦[うら]から見た富士よりも餘程好い』
 私は心の中で、こんなことを思つた。
 やがて美保[みほ]ケ關[せき]の一廓が繪のやうに前にあらはれ出して來た。
〔『田山花袋の日本一周』 (中編) 四十 山陰地方 (pp.616-617, p.630)

 大山は日本でも屈指の名山である。單に中國の名山でなく、日本の持つた多くの名山の十指の中に數へられるものゝ一つである。富士、鳥海、淺間、温泉、かう數へて來て次に指を折るのが此山である。
 富士がその背景に多くの複雜したものを持つたと同じやうに、この山もまた彼方此方から仰望の的となるやうなところにその位置を置いた。中でも、海から放つた眺望が一番すぐれてゐるのを私は見た。出雲の美保關あたりから眺めた山は殊に見事である。境から美保へ行く汽船の甲板の上から、夜見ケ濱の長松をその前景にした形がすぐれてゐた。
 遠く離れて、隱岐から望んだ形はことにすぐれてゐるといふことであつた。隱岐に行つたことのある私の友達は話した。『大滿寺山から見たさまは何とも言はれませんよ。前景も背景もなく、ぽつかりと海の中に浮んでゐるやうな氣がしますよ。實際、そこまで行つて見なくつちや、大山の名山たる價値がよくは分らないやうなもんだ。』成程それに違ひなからうと私は思つた。
〔『定本 花袋全集』 第十六巻 「山水小記」五一 (p.648)


大山〈剣ヶ峰〉が見えはじめる〝海の道〟を想定してみよう


◉ ここでは、大山の山頂を〈剣ヶ峰(標高 1,729 m)〉として、その頂が北と西の海上の、どの地点で見えはじめるかを試算する。

△ 山の頂が見える範囲を求める際の計算式(の考え方)として、たとえば円の(右側の)、円周上に接線を引けば、半径とその接線の一部で形成される、直角三角形が想定できる。―― この直角三角形の、斜辺と半径とで構成される角度、を求めればよい。

● 地球の赤道一周は 4 万キロメートルとして、その半径 r は、
 (円周の長さは直径に円周率をかける)という公式より、

2πr = 40,000 (km)
r = 40000 / 2π
40,000 ÷ (2π) = 6366.197723675814
≒ 6366.198 (km)

検算すれば、

2π × 6366.198 = 40000.00173619607 (km)


● そこで半径 6,366.198 ㎞ の円の、右側の円周上に接線を引いて、その接線と接する

6366.198 + 1.729 = 6367.927 (km)

の斜辺をもつ、直角三角形の cos θ ° を求めればよいことになる。
したがって、次の計算式を解けばよい。

6367.927 km × cos θ ° = 6366.198 km

これに数値を当てはめていくと、

cos θ ° = 6366.198 km ÷ 6367.927 km
0.9997284830683518 = 6366.198 km ÷ 6367.927 km
0.9997284418880508 = cos 1.3353 °


○ 大山〈剣ヶ峰〉の北緯は、35.371218 度なので、1.3353 度を足すと、約 36.7065 度となり、これを単純に考えれば、およそ 36.2 度の〈隠岐国〉つまり「隠岐諸島」からは見えても、 37.2 度付近の「竹島」からは見えないことになる。

―― この角度を距離に換算する。

● 地球の緯度 0 度(赤道)で、経度 1 度あたりの円弧の長さは、

40,000 km ÷ 360 ° ≒ 111.111 km

―― 111.111 ㎞を、経度の 1 度あたりの、円弧の長さの基準値として用いて、

1.3353 度の円弧の長さを求めれば、

111.111 (km) × 1.3353 ≒ 148.367 (km)

となる。


◉ 西の海上から見える範囲は、円周が〈剣ヶ峰〉の北緯 cos 35.37 ° ≒ 0.81543 の割合で短くなるので、計算値は変わる。

参考値:
cos 35.37 ° = 0.8154309948913069

―― 同様の計算を、半径 (6366.198 × 0.81543) ㎞ の円に変更して、行なえばよい。

6366.198 × 0.81543 = 5191.18883514 (km)

● つまり半径 5,191.1888 ㎞ の円の、右側の円周上に接線を引いて、その接線と接する

5191.1888 + 1.729 = 5192.9178 (km)


の斜辺をもつ、直角三角形の cos θ ° を求めればよいことになる。

6366.198 × 0.81543 km = (6366.198 × 0.81543 km + 1.729 km) × cos θ °
6366.198 × 0.81543 km ÷ (6366.198 × 0.81543 km + 1.729 km) = cos θ °

0.9996670532970886 = cos θ °
0.9996670323501685 = cos 1.4786 °

  北緯 35.37 ° の円周における、1.4786 度の円弧の長さは、40,000 ㎞ に、cos 35.37 ° をかけて、

40,000 km × 0.81543 ÷ 360 ° × 1.4786 ° ≒ 133.966 km

となる。


 ○ 竹島の位置について。


【竹島DATA】
○ 隠岐諸島の北西約158キロメートル、北緯37度14分、東経131度52分の日本海上に位置する群島。島根県隠岐の島町に属する。
〔『竹島』 竹島問題10のポイント (p.2)

 ◎ 上記資料の 2 ページに掲載されている地図が、埼玉県公式ホームページ竹島を知ろう!に大きな図で転載されている。

 ( URL : https://www.pref.saitama.lg.jp/f2208/documents/ryoudo-pamphlet_p04.pdf )

日本海は、朝日の昇る海 ――「東海」という名も持つ。



Google サイト で、本日「伯耆国 - 隠岐国」の地図を追加したものを公開しました。

〈伯耆大山〉と海上の道
https://sites.google.com/view/emergence2/

バックアップ・ページでは、大山の見える海上の範囲を、〝弧〟に描いてみました

〈伯耆大山〉と海上の道 バックアップ・ページ
http://theendoftakechan.web.fc2.com/eII/tsurugi/dCoord.html

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