2020年7月31日金曜日

〈フェルマーの原理〉の微分計算

光の最短経路は距離ではなく時間で定まる」ということが、
〈フェルマーの原理〉の意味するところです。

◎ 関数を微分した値は、接線の傾きとして用いられました。
光が媒質内で速さを変えても屈折しなければ、到達する時間が長くなるのは、少し計算すれば理解できますけれど、到達時間を最短にする、最適な屈折角は〈スネルの法則〉によることも、計算で確認できるのです。

 光の到達時間のグラフを描いて、その曲線の接線の傾きがゼロになる瞬間が、最短の時間になるわけで、まずは、その微分計算をクリアする手法が必要となります。

 この微分計算には、先に「双曲線と《光の入射角・反射角》」(2020年5月23日土曜日)で紹介した《合成関数の微分に関する定理》が用いられます。
 そして《分数乗の微分》の公式で、変数の平方根が含まれる関数を微分します。
 何はともあれ、《合成関数の微分に関する定理》の復習から、始めましょう。

 ⛞ 合成関数の微分に関する定理
● u  =  g (x) に関して、x の増分 Δx に対する u の増分を Δu とします。
● y  =  f (u) に関して、u の増分 Δu に対する y の増分を Δy とします。
● y  =  f (u)  =  f ( g (x) ) が成り立って、
 dy    =   d  f ( g (x) ) = f ´( g (x) ) g ´(x)
   
 dx   dx 
   = f ´(u) g ´(x) =    dy   ∙   du 
   
 du   dx 
  という結果が、導かれます。

 ⛞ 平方根は、2 分の 1 乗なので、分数乗の微分の公式を使います。
●  √ u  = u 1 ∕ 2
(√ u )´ =   1  (u - 1 ∕ 2 ) =   1  ∙  1   =   1
       
 2   2   u 1 ∕ 2    2 √ u  
◈ 光が屈折する水面座標を点 R (x, 0) とします。
◈ 光の速度は、空気中で V 、水中で v とします。
▸ 空気中の点 P から水面の点 R までの距離
●  PR = √ x 2h 2 
▸ 水面の点 R から水中の点 Q までの距離
●  RQ = √ (wx ) 2y 2 
▸ 空気中の点 P から水中の点 Q に到達するまでの時間
t =    √ x 2h 2    +   √ (wx ) 2y 2  
   
V v
● ここで、x について、t が最小となる条件は、
dtdx = 0
であることが、各種参考書に述べられているので、 x で微分します。

 ※ さきほど分数乗の微分で、次の式が成り立つことを確認しました。
(√ u )´ =   1
 
 2 √ u  

► まず、
f (u) =    √ u  
 
V
g (x) = u = x 2h 2
として、
f ´(u) g´(x) =   1  ∙  1  ∙ 2 x
   
 V   2 √ x 2h 2  
  =   x
 
 V √ x 2h 2  
► 次に、
f (u) =    √ u  
 
v
g (x) = u = (wx ) 2y 2
    = w 2 - 2 w xx 2y 2
として、
◍  g´(x) = u´ = 2 x - 2 w = 2 (xw)
      = - 2 (wx)
であるから、
f ´(u) g´(x) =   1  ∙  - 2 (wx)
   
 v   2 √ (wx ) 2y 2  
  =   - (wx)
 
 v (wx ) 2y 2  
► 以上より、
t ´ =   x  -  wx   = 0
   
 V √ x 2h 2    v (wx ) 2y 2  
∴    x   =   wx
   
 V √ x 2h 2    v (wx ) 2y 2  
  ここで真空中の光速を c とし、V = cn1 , v = cn2 とおくと、
1   =    n1    ,   1   =    n2 
       
 V  c  v  c
sinθ1 =   x
 
 √ x 2h 2  
sinθ2 =   (wx)
 
 √ (wx ) 2y 2  
であるから、
 n1   sinθ1 =    n2   sinθ2
   
c c
∴  n1 sinθ1 = n2 sinθ2
が成り立って、光が最短時間で到達する経路は〈スネルの法則〉に等しいことが確認できるわけです。
 ⛞ 屈折率と光の到達時間の計算 ⛞
(計算値の理解が簡単になるようにした非現実的な設定ですが)

 媒質 1 と媒質 2 の境界の光の通過点: R (150 km) + km
 ◎ 光が通過する距離と時間の計算 ◎
〔※ 単位の ms は、ミリ秒で 1 ∕ 1000 秒〕 
 媒質 1 250 km  ms 
 媒質 2 250 km  ms 
(媒質 1 と媒質 2 の合計) 500 km  ms 
◎ 下のグラフに、時間の微分 t´ を傾きとして示しました。
〔※ 理解のために便宜的に接線を描線したものの、強調された傾きの角度は正確なものではありません。〕
 1 ∙ sinθ0 = 
n1 ∙ sinθ1 = 
n2 ∙ sinθ2 = 
 水中から真空に光が入射するときには、入射角が約 48.6 度で、屈折角はほぼ水平となります。
 (参考) 真空への屈折角: θ0 =  °
 媒質 1 の入射角: θ1 =  °
 媒質 2 の屈折角: θ2 =  °
R +
n1 ∙ sinθ1 = 0.9705201
n2 ∙ sinθ2 = 0.9705201

 今回も同様に JavaScript によるプログラムを、このページ内に同梱しています。
―― また微分計算の方法についての参考書・その他の資料なども参照しつつ、JavaScript の見本をテキスト化して掲載したページを、以下のサイトで公開しています。

光の屈折・フェルマーの原理
http://theendoftakechan.web.fc2.com/eII/hitsuge/integral/Fermat.html

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