2020年8月27日木曜日

バビロニア・ギリシャの数学とグノーモン

 日時計の歴史は古く、その技術はバビロニアの時代からあったようです。実物としては、エジプトで発見された紀元前 15 世紀ころの器具があるということです。

 旧約聖書「列王紀 下」20 章 11 節には、〈アハズの日時計〉という語句が登場しています。


 日時計に用いられる L 字型の棒(日時計の針)を《グノーモン》といいます。

 ギリシャ語だと、γνώμων と書かれます。

 ギリシャ語を音写したラテン語では、gnōmōn です。

 カタカナで、グノーモーンと音写され、ここでは《グノーモン》と記述しておきます。


 その、ギリシャ語のもともとの意味を『ギリシャ語辞典』〔古川晴風/編〕で調べると、

 ① 識者、消息通、鑑定家 ; 為政者 ; 仲裁者、審判員 ; 管理人、監督者。

 ② 指標 ; 日時計の針 ; 大工の曲尺 ; pl. 馬の乳歯(それで年齢が分る)。

であることがわかります。


 この《グノーモン》は、数学的には「四角数」を作るときに、足していく数となります。

 四角数というのは、正方形の面積を計算するときの「平方数」で、自然数を 2 乗した数のことです。

 ユークリッドの『原論』(幾何学原論)第 2 巻にも《グノーモン》の定義が、記述されています。新しい研究によって、この巻は、バビロニアの数学に由来するものであると、解されるようです。

 幾何学の図形的には逆 L 字型で表現され、つまり鍵型の図形となります。

 この鍵型も、もとは直角だったようですが、ユークリッドの『原論』では、平行四辺形から切り取られた形に拡張されています。


 さて昨年のいまごろ、日時計について調べている最中に、どういう次第であったか、楕円の方程式とフェルマーの原理へと導かれ、その 1 年後には、そこから発展して、ガリレオが発見したとされている「振子の等時性」は、実は単純な円弧を描く振子ではなく、サイクロイドという図形によって実現される、という話になっていきます。

 簡単にいえば、日時計について考えていたら、なぜか振子時計の話になっていた、というわけです。


 で、サイクロイドにかかわる歴史的ないきさつは、現在まだ調べている途中ですが。


 おもしろいことには、ガリレオは「振子の等時性」を数学的に証明するのに必要な「落体の法則」( 2 乗の法則)を語るときに、「平方数(正方形)」からひとつ前の、つまりひとつ小さな「平方数(正方形)」を引いた(切り取った)際の、残りの奇数である《グノーモン》の値を用いています。

 つまりは、約 1 年が経過して、日時計の話題から振子時計の物語となり、どういうわけだか振子の等時性は、日時計の針に由来する数学の問題へと転じていくという、リアルな展開となっているのでした。


―― 各種資料を参照した詳しい内容のページを、以下のサイトで公開しています。

バビロニアの数学と日時計

http://theendoftakechan.web.fc2.com/eII/hitsuge/gnomon.html


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