【ヒルベルトが追求したもの】についての資料です
『ヒルベルトの挑戦 世紀を超えた23の問題』
(P. 11)
ヒルベルトは、問題は数学の生命だと信じていた。ある論題から問題が生まれなくなったなら、その分野は死んだも同然だ。
(P. 15)
一九〇〇年八月八日水曜日、ダヴィド・ヒルベルトは、パリで開かれた国際数学者会議の演壇に上がった。 これから、数学の問題にかんする講演を行うのだ。~~。
「その向こうに未来が隠れているベールを、進んで持ち上げようとしない人がいるでしょうか」とヒルベルトが口を開いた。~~。
(P. 16)
ヒルベルトが問題を提示したのは、問題を解くことによってこそ数学が進展すると信じていたからだ。問題はその分野が生きていることの証なのだ、と聴衆に説いた。
『ヒルベルト -現代数学の巨峰』
(P. 129)
「純粋数学の発展は、古い諸問題が新しい手法をもって解決される時に可能になる」とクラインはよく学生たちに語った。「新しい手法の適用によって古い諸問題に関するより進んだ理解が可能になると、自然に新しい諸問題が現われる」
クラインのこの言葉を例証するものとして、ヒルベルトが新たにとりかかった研究計画に優るものはおそらくあるまい。
(PP. 146-147)
「ある種の問題が、数学的科学全般の進展に関して持つ深い意義と、それらが個々の研究者の仕事において持つ重要な役割とを、われわれは否定し得ない。科学の特定の分野が豊富な問題を持つ限り、その分野は生き続ける。問題の欠除は、そのような分野の独立的発展の消滅あるいは終焉の前兆に他ならない」
(PP. 155-156)
「ここで、数学的問題が時として提供する諸困難と、それらをいかに乗りこえるかということについて、若干の注意をしておくことが適当だと考える」
「もし、われわれが数学的問題を解くことに成功しないとすれば、~~」
14 空間、時間そして数
(PP. 218-219)
ヒルベルトとは対照的に、一九〇八年の夏には、ミンコフスキーは想像力にあふれていた。九月には、彼は電気力学に関する最近の結果を、~~報告した。この講演の題目として彼は「空間と時間」を選んだ。
彼はゲッティンゲンの彼の学生たちによくいったものである、「アインシュタインの深い理論の論述は数学的にはぎこちないものです。こういえるのは、彼がチュリヒで私から数学をならったからです」
その特殊相対性理論の中で、アインシュタインは力学的なできごとを時計と物差しによって記述する際に、その内容は、その計器がその中において用いられる実験室の運動に依存することを示し、さらに、同一の物理現象の異なった記述相互間の数学的関係を述べた。
そしていま、~~「偉大な幾何学化の瞬間」が訪れた。数分間の間に、ミンコフスキーは特殊相対性理論に、彼自身のきわ立って簡明な空間―時間 (Space-Time) の数学的アイディアを導入し、それによって、一現象の異なる記述が数学的に極めて簡明に表わされ得ることを示した。
「三次元の幾何学は、四次元幾何学の一章になります」
(P. 248)
「物理学は」とヒルベルトはいった、「物理学者には難しすぎる」
これはいささか高慢な言葉のように思えるが、物理学者たちは彼の言わんとするところを理解した。
(PP. 275-277)
ゲッティンゲンで、毎週のヒルベルト-デバイのセミナーにでていた数少ない学生たちは、物理学の「生きた脈搏」がその指先に感じられるような思いをした。アインシュタインによる一般相対性理論の展開される模様は大いに興味を持って学ばれた。他の人々による同じ目的のための仕事についても学習がなされた。ヒルベルトが特に印象を受けたのは、グスタフ・ミーのアイディアであったが、当時彼はグライフスヴァルトにいて、相対論の原理に基づいて物質論を展開することを試みていた。~~。
両人とも、ほとんど同時にゴールに到着した。冬に入って西部戦線の状況が落ちついたのでアインシュタインは「一般相対性理論について (Zur allgemeinen Relativitatstheorie) 」と題する二部の論文を一一月の一一日と二五日にベルリン・アカデミーに提出した。ヒルベルトは一方、彼の物理学の基礎 (Grundlagen der Physik) についてのノートを一九一五年一一月二〇日にゲッティンゲンの王立科学協会に提出した。
~~。アインシュタインはもともと物理学の基本的諸法則を記述するためにはもっとも初等的な数学があればそれで十分であるという考えであった。事態がそれとは異なることを彼が理解し~~彼が見出したことは、~~ミンコフスキーこそが、空間-時間に関する数学的概念を構成し、それによって彼の一般相対性理論の定式化が可能にされるということであった。
(PP. 330-332)
一九二二年以降、ヒルベルトは最早物理学者ではなくなった。~~。
物理学における彼独自の業績は彼を落胆させるようなものでしかなかった。~~。彼がミンコフスキーとの共同研究にとりかかって以来の目標であった物理学の公理化はつねに彼の手からすり抜けた。
ヒルベルトによる物理学への寄与の本質的なものは、一つには彼の積分方程式論についての成果を通して生みだされた数学的方法であり、もう一つには、この方法によって可能になった理論の統一化であった。
(P. 425)
ヒルベルトの死後ゲッティンゲンのその墓に置かれた碑文……
Wir mussen wissen.
Wir werden wissen.
われわれは知らねばならない。
われわれは知るであろう。
〔再掲〕
(P. 146)
「科学の特定の分野が豊富な問題を持つ限り、その分野は生き続ける。問題の欠除は、そのような分野の独立的発展の消滅あるいは終焉の前兆に他ならない。すべての人間的働きが特定の目標をもつのと同様に、数学的研究はその対象となる問題を必要とする。」
◆ この表現と似たような感じのアインシュタインの言葉を探してみました ◆
〝あらゆる困難の真ん中に機会がある。〟
という一文は前に紹介しましたが、まずはその同じ書籍から。
『増補新版 アインシュタインは語る』
(P. 17)私には特別な才能などありません。ただ好奇心が激しく強いだけです。
アインシュタイン伝の著者カール・ゼーリッヒへの手紙、1952年 3月11日。「アインシュタイン・アーカイヴ」39-013.
『あなたにもわかる相対性理論』
茂木健一郎[もぎ・けんいちろう]/著
(PP. 003-004)
人間の脳というのは不思議なもので、たった一つの経験が大きな影響を残し、人生の行く末を変えることがある。
私にとっては、小学校五年生くらいの時に読んだアルベルト・アインシュタインの伝記がそうであった。~~。
アインシュタイン自身、「感動するのをやめた人は、生きていないのと同じである」という言葉を残している。ここでアインシュタインが言っている「感動」とは、この宇宙を支配している法則にふれることで私たちの心に起きるさざ波のことであろう。それは、発見する歓びであり、創造へと向かう衝動である。
科学が明らかにするこの世界の真実にふれて、私たちの心は戦慄[せんりつ]する。生きることの意味が、より深いところで確認できるようになる。少々の困難ではへこたれない、前向きに生きる力が湧[わ]き上がってくるのである。
☆ こちらはどうやら、流布している和訳は「感動しない人生を送るのは、生きていないことと同じである」のようで、《教えて!goo》のサイト に、詳しい説明がありました。
◎ この言葉に関する主な英文資料を次にあげておきます。
Albert Einstein (Wikiquote)
The most beautiful experience we can have is the mysterious. It is the fundamental emotion that stands at the cradle of true art and true science. Whoever does not know it and can no longer wonder, no longer marvel, is as good as dead, and his eyes are dimmed. It was the experience of mystery ― even if mixed with fear ― that engendered religion. A knowledge of the existence of something we cannot penetrate, our perceptions of the profoundest reason and the most radiant beauty, which only in their most primitive forms are accessible to our minds: it is this knowledge and this emotion that constitute true religiosity. In this sense, and only this sense, I am a deeply religious man.
......
The most beautiful thing we can experience is the mysterious. It is the source of all true art and science. He to whom this emotion is a stranger, who can no longer pause to wonder and stand rapt in awe, is as good as dead: his eyes are closed.
......
The most beautiful emotion we can experience is the mysterious. It is the fundamental emotion that stands at the cradle of all true art and science. He to whom this emotion is a stranger, who can no longer wonder and stand rapt in awe, is as good as dead, a snuffed-out candle. To sense that behind anything that can be experienced there is something that our minds cannot grasp, whose beauty and sublimity reaches us only indirectly: this is religiousness. In this sense, and in this sense only, I am a devoutly religious man."
......
PRINCETON ALUMNI WEEKLY
VOLUME LXV. NO. 1 SEPTEMBER 22, 1964
SPECIAL ISSUE WITH "UNIVERSITY" MAGAZINE
(P. 31)
Perhaps Albert Einstein has put it as succinctly as any one: “The most beautiful thing we can experience is the mysterious. It is the source of all true art and science. He to whom this emotion is a stranger, who can no longer pause to wonder and stand rapt in awe, is as good as dead: his eyes are closed. This insight into the mystery of life, coupled though it be with fear, has also given rise to religion. To know that what is impenctrable to us really exists, manifesting itself as the highest wisdom and the most radiant beauty our dull faculties can comprehend only in their most primitive forms―this knowledge, this feeling is at the conter of true religiousness.”
つまり は
◆ 問題のない人生[の時間]は、そのとき死んでいたとしても、たいして違わない。 ◆☆ 繰り返しになりますが、問題の発生をただの「トラブル」と捉えるか、それとも「トラブル・シューティングのチャンス」と捉えるかは、ひとそれぞれの問題に相違ありません。――事実として「問題[trouble]が発生した」のです。それが当事者にとって、《 “Problem” or “No problem” 》のいずれであるかは、まさにその当事者 = 私たち次第なのでしょう。
◇ 西欧の『バイブル』には試練についての記述があります ◇
『聖書 新共同訳』
「コリントの信徒への手紙 一」 10. 13
あなたがたを襲った試練で、人間として耐えられないようなものはなかったはずです。神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます。
◇ また有名な “Apollo 13” の映画があります ◇
このことについては、項を改めたいと思います。
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